薄暗い一室で、郭基内と九房玄弥はディスプレイの前に佇んでいた。目前には膨大な2進数を白抜きに表示する真っ黒な画面。
「なんだ、それは」と言う基内の問いに玄弥が答える。
「何って、コンピュータウィルスって奴だな。回線を伝って人様のパソコンに忍び込んで、色々やらかしてくれるソフト。こいつはひたすら0と1が羅列されるタイプでね。」
「で、これがどうしたと言うんだ」
「ああ。ひたすら、と言ったが、こいつの2進数には限度があってね。その数値が10進数で言う195兆9552億まで届けばそこで終わる」
「だから何だ」
「ニネヴェ定数だよ、これは」
「ニネヴェ定数って、あれか、ギルガメッシュ叙事詩と一緒に出土したって言う・・・」
「そう、太陽日で表される全ての公転周期の倍数を秒数で正確に表した、件の定数――」――
先日、部屋の掃除の序にDOS/V保存してあった、過去の小説の書きかけやら何やらを発掘。まぁ、書きかけと言うよりは「こういう文章を掘り込んだ小説を書こうか」等と考えて、1シーンだけ書いて放置と言う無駄なものも結構有る。上記もその1つ。おそらく大学4年次のものだと思われ。当時は、今に比べりゃネットも発達していなかった時期なので、ウィルスの説明も適当だったり。多分、俺が使う事はもう無いと思われるので、興味がありそうな方は適当に使ってくれても構わないですよ。つか、誰が使うんだ、こんなネタ(苦笑