施設介護における「生産性」って上げられるの?


※注【本記事は2022年1月15日に「note」に書いた記事の転載になります】

先に書いた「「介護現場の人員は減らせるの?」と言うお話。」の続きっぽい記事になります。

施設介護での人員配置基準を緩める為、あるいは働き方改革の名の元に介護現場でも「生産性を」「生産効率を」上げるべきだと言う話も規制緩和派の方面から聞こえてきたりもするのですが、事、介護と生産性と言うのは相性が悪いと言うか二律背反な部分があるんですよね、と。

・例えば施設における「食事」で考えてみると…

例えば「食事」で「生産性」を上げようとすると如何いう手段が考えられるか? 利用者さんに「早く食べて」とか言える訳も無いですし、そもそも事故の元なので何処で効率化を図るか。と言うと、「配膳」を含む準備段階だとおもうんですよね。これについてはアウトソーシングも出来るでしょう。で、事前に食事形態も準備万端にしておく。刻んだり、食事にとろみトロミ付けたりと。まぁ、コレで手間は省けますよね。効率も上がります…が、コレだと、ただの味気ない病院食ですよね、実際。それまで日々の生活だったり、あるいは食事を楽しんだりと言う所を考えると、例えば焼き魚だって最初から刻んだものじゃ無くって、実物を拝んだ後で細かく解した方が俄然食べる気になるでしょうし、配膳だってトレーに全部乗っかってるモノよりは普通に食器で取り分けて出て来た方が実際の生活っぽいですよね。そう言うリアルっぽさが食欲も増すかもしれません。現状の介護が目指す方向は「より今までの生活に近い生活」なので、こう言う行程に手間と工夫を掛ける必要性が出てくるんですが、コレって生産性と真逆の考え方なんですよ、ええ。

この点から考えてもいたずらに各所で「生産性」を重視すると、恐らく一般には見え難いソフト部分での介護の質は落ちる事は目に見えてます。なので、この「ソフト面」の質を落とさずに生産効率を上げる必要がある訳です。コレはICT使ってもAI使っても中々の難題です。でも、先を見据えると避けて通れ無いかも知れない(労働人口は少なくなって行くので…

・利用者さんの「QOL」と「ADL」が向上すれば生産性は上がる?

其処で必要になってくるのが、今まで「経験」「勘」で有った部分のアウトプットとマニュアル化、PDCAサイクルを礎とした介護過程の拡充などになって来るのかなぁ…と。無茶苦茶難しい所ではありますが、此処はICTやAIの入り込む隙があるので、此処で大いに活用して欲しいと思います。前回の記事で書いた様な行動予測もそうですが、有る程度のアセスメントを入力すればビッグデータを元に介護計画のアウトラインや方向性を作成してくれるAIとか実装されると(「自分で考える」能力は確実に下がるので咄嗟の判断は不安ですが)、利用者さんのQOL(生活の質)とADL(日常生活動作)の維持or向上に結構お役立ちだと思います。
施設職員側からすると、「QOLとADLを長く維持して貰って、より長く元気に生活をして頂く」と言うのは本当に有難い事なので。ええ、

「生産性」上がりますから

なんでか? まぁ、コレは個人的な意見も含みますが、施設介護で一番手間が掛かるのって

「新規入居者が入って来た時」

ですもの。別に介護に限った話じゃないですけど、新しい人が入ってくると全体のルーチンが変わる事ってよく有ると思うんですが、認知症など環境の変化に敏感な方々が集まる高齢者施設では顕著なのかなと。一人が変わる事で全体に影響を及ぼす事なんて往々にしてあります。それって、やっぱり物凄い手間。
勿論、避けては通れない手間ではあるんですが、長く安定して生活して下されれば、其の手間の回数は減らせる。即ち仕事もし易くなるので、実際の所、一番生産効率を上げようとすると、真面目に質の高いサービスを提供していくのが吉なのかなと(機嫌よく元気で施設生活に慣親しんで頂ければ有り難い、と

・個別マニュアル整備も生産性向上には大切

後は個別のマニュアル化ですよね。コレもAIさんが作ってくれれば有り難い。いや「介護職員が介護職員用に」なら作れるとは思うんですが、今後「一日バイト」なんかも出てくる事を鑑みると、そう言う人でも出来る様なマニュアルって中々人力では難しいと思うので。まぁ、個人的には一日バイトで出来る範囲って精々配膳・掃除の雑用位しか無いとは思ってますけど。身体介助はどんだけサポート機器使っても、経験が無いと難しいですもの。(経験が有ったとしても「全く触った事の無い利用者さん」は怖いです・汗

それを考えると、そもそも、しっかりと給与を上げて、新人が辞めない様にしてしっかりと教育していく方が早道なんじゃないかとも思って来た。

投稿者: ikariya

明日、いかりや。 93~03年位まで、主にエロ漫画雑誌の「漫画ホットミルク」「漫画ばんがいち」「コミックメガキューブ」の読者コーナー等に投稿していた元・ハガキ投稿者。兼「漫画ホットミルク」の読者集会「愛宴」幹事の、どうも最後の生き残りの模様です。同人活動も碇屋工房にて97年~現在まで25年も続いてしまいました。 好きなものに関してはこちら参照で。