「介護現場の人員は減らせるの?」と言うお話。


※注【本記事は2022年1月10日に「note」に書いた記事の転載になります】

21年末辺りに「規制改革会議、介護施設の人員配置基準の緩和を促す 4対1を求める声も」と言う声が出た直後に、日本介護福祉士会が「規制改革推進会議に関する報道について」と声明を出す等、介護施設の人員配置についての話が年末に再燃しましたが(「4対1」に規制緩和すべき、と言う話は前から出てた)。現場に10数年居た身からすれば、正直「3対1」でもキツく、手厚い所だと「2.5対1」も有る現状は鑑みると当然反対なのですが、そもそもの人材人出不足の現状を考えると今でこそ2対1、3対1での対応が出来たとしても、今後遠からず難しくなるのでと考えられます。では、如何すれば4対1に出来るのか? と、言うのを考えてみたいと思います。

【センサーやAI、ICTなどを活かした業務の効率化は図れるのか?】

良く俎上に上がるのが「ICTで事務作業を軽減して効率化を図る」と言う話なのですが、入力業務に関しては10年位前から結構ICT化は進んでます。PC入力で医療・栄養・事務方との情報共有などは当たり前ですし、タブレット導入で更に手元での入力情報共有なども行っている事業所さんは結構見受けられます。データも早い段階からクラウドされているソフトもありました。勿論これらのICT化の恩恵で(オール手書よりも)業務負担は減りましたが、だからと言ってマンパワーが減らせるレベルには到底及びません。ICTを活かし、この手の事務業務から介護士を解放したとしても、介護上最も必要な対人援助の軽減にはならないかと。

だって相手(要介護者・利用者)が求めてるのは「人」なんですもの。

結局、「筋力アシスト使って介護負担軽減」とか「ロボット使って負担軽減」とか言う話が出て来ても「何処に、何にマンパワー割かれるの」化と言えば、必要時の見守り、声掛け、話し相手となってきます。コレがICTで減らせるなら、とっくの昔に減ってますよね。センサー利用と言っても所謂、簡単なセンサーマットや出入り口設置の従来のセンサー位でマンパワーは中々削れないでしょう。

「では、如何すれば」と言う話になると、これは恐らく個人情報やらプライバシーとやらとのせめぎ合いになると思うのですが、徹底的な行動管理になってくると思うんですよ。「行動管理」と言っても「アレするな!」「これだけして!」と行動制限して行こうと言う話では無く、

各居室への高機能のセンサー類(サーモ付き等)の設置&食堂リビングは個体識別が出来る映像センサー、後はスマートウォッチ活用によるバイタルチェック。で+筋力量やら病状を踏まえ、それまでの行動をビックデータ化してAIに行動パターンやリスク予知をして頂く。と、言うのが出来ればな、と。

現場で介護する側からすれば、マンパワーを掛けざるを得ない状況と言うのは、各利用者が自立して行う動作への的確なサポートなんですが、各位、個人として自由に行動されていると、丁度良いタイミングでその場にいるのが難しい訳ですよ。だからマンパワーと言うか「人の目」に頼る訳で(後は前後の行動パターンや表情、経験と勘に頼らざるを得ない、と)。

「政府はセンサーやAI、ICTなどを活かした業務の効率化の後押しに一段と力を入れる方針」と言っているので、そうで有ればこれ位は出来るでしょ。ICTを「活用する」ので有れば最低限これ位やってから、人員に関しては議論にして欲しいところです。

ただこれはこれで介護の順位をあからさまに決めてしまったり(トリアージしてしまう)など、色々問題が有るとか言いだす人は必ず出るでしょうけど(汗

後は施設設備的なモノですよね。前述のパワーアシストは有った方が有り難いので安価でレンタル出来ればなと。床材なんかも衝撃時のみ軟化する素材が実際にあるので、そう言う床材を導入するときに7割ぐらい負担で半強制で入れ替えてくれれば、転倒後のリスク軽減に繋がるので有り難い。このご時世で増えて来た「TV電話」なんてもの有りと言えばアリなんですが、対人援助の観点から言えば代替にはなり得ないかなぁ…と(リアルで会うのには敵わない・汗

【山奥に来てくれるボランティアが欲しいよね…】

あと、マンパワーの軽減にお役立ちなのが「ボランティア」。自分が知る限りの話しですが、京都府内の某ユニットケアでは超有名な施設さんは(回りが住宅街と言う地の利はありますが)結構、上手くボランティアを導入されてたかなと。「話し相手をして下さる」と言うのはかなり大きな労力軽減になるので、話し相手ボランティアがいるだけでも全然職員負担は違ってきます。当然努力はされてるとは思いますが、都市部の施設さんは積極的にボランティア組織を作って行く事をお勧めしたいです。

だた、問題は田舎なんですよね。メイン層を慰問に積極的に来るような「シニア層」に置きつつ、シニアだけでなく学生も含む「ボランティア組織」を作れないか、それも施設単位じゃ無くって地域単位で…って思うんですよね。こう言うのを包括にいるソーシャルワーカーさんが需要を見て動いてくれると有り難いんですが(「自分でやれや」って言われそうですが・汗)、此処も上が大方針を作ってくれるか、若しくは福祉業界から提言していけるといいんじゃ無いかぁ、と。「デジタル」「生産効率」って掛け声は良いんですけど、出来る所と出来無い所はちゃんと分けて、利用者のニーズに答えつつマンパワーが必要な部分を極力削れるようにして行って欲しいかな…と思いますよね(汗

【追記】

国に規制緩和の件、要はSONPOが音頭取りなので積極的に「規制緩和」って流れになってるんだろうなぁ、と。SOMPOホールディングスの櫻田CEOが「1/4にすれば2倍のマンパワーが」「生産効率が」と言う規制緩和派なので、まぁ、語るに落ちると言うか何と言うかで。

年末にプレゼンやったみたいだけど「本当に」「どの施設でも」出来るのか、他の介護施設や専門職の意見も聴きたいので、プレゼンの動画も見てみたいし職員の忖度の無い生の意見も聴きたいよねと。

投稿者: ikariya

明日、いかりや。 93~03年まで成人向け漫画雑誌「漫画ホットミルク」「漫画ばんがいち」「コミックメガキューブ」の読者コーナーに投稿していた元・ハガキ投稿者。漫画ホットミルク読者集会「愛宴」の幹事も長らく務めておりました…...まだ「おります」かもしれません。同人活動も碇屋工房にて97年~現在まで続いております。好きなものに関してはこちら参照で。